ここではエピジェネティクスと腸内フローラが幸せを呼び寄せる理由について述べていきたいと思います。
「エピジェネティクス」とは大まかにいえば、これまで遺伝子の存在が生命のほとんどを規定していると思われがちでしたが、環境からも遺伝情報は左右されることが分かったために、生物の運命はあらかじめ決められているわけではない、ということです。
つまり、生命の本質に関する「氏か、育ちか」という議論は、これまではDNAの存在が確固としていたために「氏」(生まれ)に軍配が上がっていたのですが、近年は「育ち」(環境)のほうが優勢である可能性が高いということが分かってきたということなのです。
そのため、何らかの遺伝情報を知ったとしても、自分の運命に対して必ずしも悲観的になる必要はない、と考えられるのです。
それでは、「エピジェネティクス」と腸内環境の改善を、日々の生活にどのように関係させていけば良いのでしょうか?
その答えとしては、まず、自分にとって「心地がよい」「気持ちがよい」という環境を、自ら選ぶようにするということが挙げられます。
なぜなら、何となく嫌な感じがする場所や、必要以上のストレスを感じる環境に身を置くことは、腸内の環境を確実に悪化させてしまうからです。
そのことにより、腸内フローラのバランスが崩れ、腸内環境が悪化すればするほど、体調不良に陥りやすくなったり、免疫力が低下することで病気になりやすくなったりします。また、精神面でも不安定になり、うつの症状が現れてくるなど、心が不調に陥ってしまうことも考えられます。
過剰なストレスを感じる環境
↓
腸内環境の悪化
↓
体調不良や病気、うつなどの原因
反対に、生きていることが気持ちが良いと思えるような環境にいれば、ひとつひとつの細胞が喜び、そのことが遺伝情報にも良い影響を与えるようになります。そのため、過度のストレスを避けたり、嫌な気分になりやすい環境に身を置かないようにしたりすることが重要です。
もちろん、自分のいる環境をいきなりがらりと変えることは難しいかもしれません。
しかし、たとえ環境を変えにくい状況に置かれているとしても、毎日の生活において、自ら環境を変えようとする意志をもち、自らの環境を選び取ろうとすることは出来ます。誰であれ、そうすることで自分の居場所を少しずつ変えていくことは可能なのです。
また、それと同時にプレバイオティクスやプロバイオティクス、バイオジェニックスによって腸内フローラを改善していくことも大切です。腸内環境が良くなれば良くなるほど、体調は良くなり、気持ちにも余裕が生じてくるようになります。
腸内細菌の大半は、善玉菌でも悪玉菌でもない日和見菌だと言われていますが、その日和見菌が実は腸内のバランスを保つために重要な役割を果たしているのと同じように、腸内フローラの改善によって物事を善か悪か白か黒かで単純に決めつけることのない、おおらかな心や、他者を敬う慈しみの気持ちをもてるようになってくるのです。
つまり、自らの環境を選び取ることと、食事による腸内環境の改善を並行して行うことで、自分の気持ちや生き方に変化が生じてくるのです。
環境の選択
+
腸内フローラの改善
↓↓↓
自分の気持ちや生き方が良い方向に変化していく
このことに関して、胃腸内視鏡外科医として多くの人たちの腸の内部(腸相)を観察してきた新谷弘実氏は、以下のように述べています。
これまで著書や講演の中で再三語ってきたように、私たちの胃や腸には、私が「胃相」や「腸相」と呼んでいる固有の「表情」があります。
たとえば、よい腸相は内視鏡で覗くと腸壁の表面がなめらかで、やわらかく、停滞便(宿便)などもたまっていない状態であることがわかります。こうした腸相の人の健康状態は例外なく良好で、生き生きとした豊かな人生を送っています。腸の表情がいい人は、顔の表情がとてもいいものなのです。
一方、悪い腸相というのは、腸壁の表面が硬くでこぼこしていて、あちこちに停滞便が見られます。また、憩室と呼ばれるポケットができていて、そこに停滞便がつまっていて、その周囲には、炎症ができていることもあります。
こうした腸相の人は生活習慣病が乱れていることが多く、肥満をはじめ、高血圧、糖尿病、高脂血症、動脈硬化などの症状が少なからず抱えています。また、(中略)すぐにキレる、鬱などの気分障害に陥る、ここ一番で集中できない、踏ん張れないなど、精神的にも不安定な人がとても多いのです。
(新谷弘実『酵素力革命』より)
このように、腸内環境と普段の気持ちの有り様は密接に関わっているのだと考えられます。
したがって、腸内環境をより良くするために、まずは腸内細菌の集まりである腸内フローラの改善を行ってみるということが、幸福のために大切なのです。