近年、多くの方が、便秘に悩まされるようになりましたが、便秘は長引いてしまうと腸内環境を悪化させてしまう原因になります。そのため便秘の予防と解消のための対策が日頃から必要になってきます。
特に若い女性の間では便秘が深刻化していますが、その便秘について理化学研究所の辨野義己氏は以下のように述べています。
若い女性に便秘が多い背景には、行きすぎたダイエットなど、食習慣の乱れや運動不足があると考えられます。
腸内環境が悪いと便秘が起こりますが、便秘の状態が続くと、そのためにまた便秘になるという悪循環が起こります。
大腸の中のものが移動しにくくなると腐敗が進み、たくさんの有害物質が作られます。それが排出されないまま腸内に長くとどまったり、さらに肝臓で解毒された有害物質が腸内細菌によって活性化されたりすると、大腸がんなど、さまざまな病気を起こしやすくなります。
(辨野義己『腸を整えれば病気にならない』p128~129)
また、医学博士の内藤裕二氏は、市販の便秘薬の長期服用は、配合されているセンナ、ダイオウ、センノシドなどの生薬の影響によって、粘膜細胞が傷害され、腸が黒くなることを指摘しています。
さらに「慢性便秘の患者さんの腸内フローラは、極端に有害菌に偏っていることは明らかであり、このような患者さんに必要な治療は、単なる下剤の投与ではなく、長い目でみた計画的腸内環境改善対策であることは明白です」と述べています。(参考 内藤裕二『消化管は泣いています』)
そのため、便秘は日頃から腸内フローラの改善を行うことでなるべく早く解消することが望ましいのですが、そもそも便秘とはどのような状態なのでしょうか?
実は便秘の定義は難しいとされています。医学博士の松生恒夫氏によれば、正常な排便の量と回数は、
であることが、一つの目安だとされているそうです(参考 松生恒夫『腸に悪い14の習慣』)。
「ただし、「おおむね二~三日に一度排便があって、腹部膨満感などの自覚症状を伴わなければ便秘とはいわない」というのが共通認識」だとしています。
また松生恒夫氏は、「便秘には何らかの病気があって起こる症候性便秘と、特に病気はなく、生活習慣などが原因で起こる常習性便秘」があるとしています。
便秘といえばほとんどは「常習性便秘」のことを指しますが、症候性便秘の場合、大腸がんの可能性も浮上してくるため、念のため消化器病の専門医を受診することも松生氏は推奨しています。
さらに松生氏は、『腸に悪い14の習慣』のなかで、便秘の原因を知ったうえで判断するため、「障害部位と原因とに分ける新しい分類を提示」しています。
障害部位 | 原因 |
小腸 |
①術後腸管癒着症 ②炎症性腸疾患 ③薬剤性 |
結腸 |
①弛緩性便秘(下剤長期運用による二次的障害か) ②大腸メラノーシス(アントラキノン系下剤長期運用による二次的障害) ③術後腸管癒着症 ④薬剤性 ⑤加齢による腸管機能低下 |
直腸・肛門 |
①直腸反射の消失 ②肛門反射の消失 ③腸管切除後 |
消化管内容物 |
①偏食(食物繊維摂取量の減少) ②加齢による食事量の減少 |
ストレス |
①心理的ストレス ②物理的ストレス ③月経前症候群(PMS) |
(松生恒夫『腸に悪い14の習慣』p179より抜粋)
また、便秘に加えて下痢の症状も起こってくる場合は、過敏性腸症候群の可能性が考えられるため、注意が必要です。
光岡知足氏による便秘改善法
①野菜・果物・海藻を中心に、食物繊維の多い食べ物を多く取り入れる。
②朝一番に水を飲み、「胃・結腸反射」をうながす。
③起床後、軽い運動や散歩などで体を動かす。
④便意があったら我慢せずに、早めにトイレに行く。
⑤気分転換を図り、ストレスを緩和する習慣をつける。
(光岡知足 『腸を鍛える 腸内細菌と腸内フローラ』 p159)
参考文献
光岡知足 『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社
松生恒夫 『腸に悪い14の習慣 「これ」をやめれば腸が若返る』 PHP研究所
辨野義己 『腸を整えれば病気にならない 腸内フローラで健康寿命が延びる』 廣済堂出版
内藤裕二 『消化管は泣いています』 腸内フローラが体を変える、脳を活かす』 ダイヤモンド社