腸内フローラが生み出す短鎖脂肪酸にはうつの症状を緩和・改善する働きがあるとして、近年、期待されるようになってきています。
短鎖脂肪酸とは主に水溶性食物繊維を摂取すると、腸内細菌が「発酵」と呼ばれる現象を起こし、作り出す飽和脂肪酸の一種です。
ちなみにこの短鎖脂肪酸は、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの総称ですが、短鎖脂肪酸は主に大腸のエネルギー源になり、大腸がんを予防する効果などがあると言われています。
また、肥満症の予防やダイエットにも効果的だとして、近年、注目を浴びるようになりました。
その短鎖脂肪酸について、医学博士の内藤裕二氏は『消化管は泣いています』のなかで以下のように述べています。
食物繊維は、腸内細菌の中でも有用菌といわれるフローラに利用され、短鎖脂肪酸が生成されることが注目されています。
脂肪酸とは、油脂を構成する成分の一つで、数個から数十個の炭素が鎖のように繋がった構造をしていますが、そのうち炭素の数が六個以下のものが短鎖脂肪酸 と呼ばれ、たくさんの種類があります。その中では、酪酸、酢酸、プロピオン酸が特に重要と考えられていますが、実は、それぞれの短鎖脂肪酸が腸管内でどのような役割を果たしているかについては、よくわかっていません。
この短鎖脂肪酸は、ヒトの大腸において食物繊維をエサとして腸内細菌が発酵することによって作り出されます。つまり、これまでヒトの健康増進に良いと考えられてきた水溶性食物繊維の機能の一部は、短鎖脂肪酸に関与していることが明らかになってきたわけです。
(内藤裕二『消化管は泣いています』p190)
また、短鎖脂肪酸とうつの症状緩和との関係性については、
有用菌によって産生される短鎖脂肪酸の中でも、特に酪酸には、抗うつ作用や認知機能改善作用があるようで、盛んに研究されているようです。こういった基礎 研究は、消化管環境を改善し、有用菌を増加させるライフスタイルが、ストレスに強い、うつになりにくい、認知機能を維持する機能につながる可能性を示すも のであり、大変興味深い点です。
(内藤裕二『消化管は泣いています』p179)
としています。
つまり、短鎖脂肪酸のうちの酪酸には、ストレスに強くなったり、うつを予防したりする作用があるそうなのです。
また内藤裕二氏は、腸から脳への関わりである「腸脳相関」には、
有用菌の増加→短鎖脂肪酸の増加→クロム親和性細胞刺激→セロトニン産生→幸せ感
といった経路が存在するということを、カリフォルニア工科大学のマウスを使ったセロトニン濃度の実験から見出しています。
そして、「幸せ物質の産生には、トリプトファンを含むタンパク質の摂取とセロトニン産生に適した腸内フローラが必要なようです」と述べています。
このように、腸内細菌によって短鎖脂肪酸が作られるようにすることは、うつの症状改善にも効果的だと思われます。
もちろん、うつ病の原因の全てが腸の状態に関係しているわけではありませんが、うつのつらい症状を少しでも予防・緩和するためには、腸内細菌のバランスを整え、腸内フローラを改善していくことが重要だと考えられます。
ちなみに短鎖脂肪酸は【善玉元気】 などのサプリメントから摂ることも出来ます。
短鎖脂肪酸が主成分の乳酸菌発酵エキス「善玉元気」