腸内フローラの改善に加えて、アトピー性皮膚炎のかゆみを治すには、どのようなことを心がける必要があるのでしょうか?
腸内フローラ改善でアトピーのかゆみを治す方法についてはこちらのページをごらんいただきたいと思いますが、ここでは腸内フローラの改善以外に、アトピー性皮膚炎のかゆみを治すために必要なことを挙げてみたいと思います。
アトピー性皮膚炎のかゆみを治すためのポイントとして挙げられるのは以下の通りです。
患部をひっかかないようにして皮膚のバリア機能を高める
アトピー性皮膚炎の厄介なところは、肌に強烈なかゆみを感じる度に、皮膚をひっかいてしまうところです。そのため、皮膚をひっかくことが習慣やクセになってしまい、ひっかく度に皮膚のバリアが壊されてしまい、いつまで経っても皮膚のバリアが回復しないという悪循環に陥ってしまいます。
そのため、アトピー性皮膚炎の症状が出てきたら、出来る限り皮膚をひっかかないようにすることが必要になってきます。
細胞の新陳代謝が良くなるような生活習慣を送れば、皮膚はバリア機能を回復させ、次第に健康な肌を取り戻すことが可能です。しかし、問題は今述べたように、かゆみを感じるたびについひっかいてしまうことで、バリア機能の回復を妨げてしまうことなのです。
そのため、かゆみを感じて我慢できないという場合は、医師から処方されたステロイド剤や抗ヒスタミン剤、保湿剤などを最小限使っていくことも必要になってきます。ただし、そのような薬に依存するのではなく、かゆみが抑えられている間、腸内フローラの改善を行うことによって、アレルギー症状が起きにくいからだを作っていくことが大切です。
アレルギー症状が起こる際には、必ずアレルギーの原因であるアレルゲンが存在します。花粉症の場合は、主にスギ花粉であり、食物アレルギーの場合はタンパク質ですが、アトピー性皮膚炎の場合は、食べ物、ダニ、ハウスダスト、金属、洗剤などです。
皮膚をむやみにひっかかないようにして肌の健康を保つように心がけることも大切ですが、アレルギーの原因であるアレルゲンを生活環境から除去することもアトピーの症状改善のためには必要です。また、知らないうちに寝床に潜んでいるダニにも注意が必要です。
そのほか、ストレスや電磁波なども、アトピーのかゆみを引き起こす原因になります。
アトピー性皮膚炎をからだの中から治していくためにはリノール酸が多く含まれたサラダ油などの油の摂り方に気をつけることが大切になってきます。
アトピー性皮膚炎の油の摂り方の関係については、例えば医学博士の永田良隆氏が『油を断てばアトピーはここまで治る』のなかで、「必要以上にとり過ぎた植物油は体内からあふれ出し、皮脂腺を通して皮膚表面に排出されます。そして、これがかゆみ、湿疹の元になります。つまり、植物油はアトピーを二重に悪化させる原因になります」としています。
では具体的にサラダ油の何がアレルギー症状を引き起こすのかといえば、それは「リノール酸」と呼ばれる脂肪酸です。
このリノール酸は体内でγ‐リノール酸に変わり、さらに「アラキドン酸」と呼ばれる脂肪酸に変化していきます。
この「アラキドン酸」は脳の発達に必要な脂肪酸だとされていますが、その一方でロイコトリエンやプロスタグランジン、トロンボキサンなどのホルモン様物質を生成するとされています。
そして、これらのホルモン様物質は体内で炎症を引き起こすため、かゆみの原因だと言われているのです。
そのため、アトピー性皮膚炎におけるかゆみの症状を抑えるには、アラキドン酸に変化するリノール酸が多く含まれているサラダ油を日頃の食事から減らしていくこと必要になってきます。
ちなみにリノール酸は身の回りのほとんどの食品や普段使っているサラダ油に含まれているため、全く摂らないように心がけても体内で不足することはほとんどありません。
ではアトピー性皮膚炎の症状を緩和していくためには、どのような油を選び、摂っていけば良いのでしょうか?
アトピー性皮膚炎を緩和するためには、「オメガ3脂肪酸」を積極的に摂ることが必要になってきます。
オメガ3脂肪酸とは「α‐リノレン酸・DHA・EPA」のことですが、オメガ3脂肪酸はオメガ6であるリノール酸とは相反する働きがあるとされているのです。
特にこのうちの「EPA」にはアレルギー症状を抑制する作用があると言われているため、アトピー性皮膚炎をはじめとしたアレルギー症状を抑制するためには、リノール酸が多く含まれているサラダ油を減らし、代わりにオメガ3脂肪酸が豊富に含まれた油を摂っていくことが必要になってきます。
オメガ3脂肪酸はイワシやサバなどの青魚に多く含まれています。また亜麻仁油やえごま油にはその1~2割がDHAやEPAに換わるαリノレン酸が豊富に含まれています。もし食品からオメガ3脂肪酸を摂りにくい場合はサプリメントを利用することも効果的です。
アレルギー症状は、体内に細菌やウイルス、未分化のタンパク質などの抗原が入りこみ、その抗原を敵と見なして攻撃する免疫系の働きと関係しています。
そのため、アレルギー症状を少しでも良くするためには、なるべく免疫系が異物と見なすようなものを体内に取り込まないことが重要になってきます。
では、細菌やウイルスなどの異物はどこから入り込むのでしょうか?
実は細菌やウイルスなどの異物が入りこむのは、主に呼吸器と腸です。
アトピーを治すためには腸から異物が侵入しないよう、腸管のバリア機能を高めていくことがたいせつですが、それ以外にも、口呼吸によって細菌やウイルスが容易に体内に入りこまないよう、鼻呼吸を徹底することが必要です(参考 西原克成『アトピーが治った 5つの生活習慣を変えるときれいな肌が戻る』)。
そのため、起きている間はもちろんのこと、寝ている間も、口にサージカルテープを貼るなどして、鼻呼吸を徹底することが大切です。
また、腸を冷やしても、細菌が体内に入りこんでしまうので、腸は冷やさず温めることが大切です。
以上が、アトピー性皮膚炎のかゆみを治すために必要なことです。
参考文献
上野川修一 『からだの中の外界 腸のふしぎ』 講談社
光岡知足 『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社
福田真嗣 『おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法』 KKベストセラーズ
藤田紘一郎 『アレルギーの9割は腸で治る! クスリに頼らない免疫力のつくり方』 大和書房
斎藤博久 『アレルギーはなぜ起こるのか ヒトを傷つける過剰な免疫反応のしくみ』 講談社
菊池新 『なぜ皮膚はかゆくなるのか』 PHP
永田良隆 『油を断てばアトピーはここまで治る』 三笠書房
帯津良一編 『アトピーを治す大事典』 二見書房
西原克成 『アトピーが治った 5つの生活習慣を変えるときれいな肌が戻る』 たちばな出版