潰瘍性大腸炎の症状の緩和や予防には、腸内フローラの改善が有効です。
炎症性腸疾患のうちの潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に潰瘍やびらんが出来て、発熱、下痢、血便、貧血などが起こる大腸の病気のことです。
この潰瘍性大腸炎の罹患率は、10代後半、20代、30代、40代の方を中心に、年々増加しているとされていますが、発症原因については解明されていません。
しかし、腸内細菌の集まりである腸内フローラを改善することにより、症状を緩和することができるといわれています。
その理由は、炎症性腸疾患のうちの潰瘍性大腸炎は、遺伝というよりも、腸管免疫の異常が関係しているとされているからです。
そのため、腸内フローラ改善によって腸管免疫の不具合を修正すれば、潰瘍性大腸炎の症状は良くなると考えられるのです。
この潰瘍性大腸炎と腸内フローラの改善に関して、理化学研究所の辨野義己氏は以下のように述べています。
炎症性腸疾患の原因が腸内フローラの異常にあるのなら、腸内フローラの調子を整えれば、症状はよくなるはずです。
その観点から、プロバイオティクスとプレバイオティクスを用いた治療がいろいろと試みられています。
プロバイオティクスとは、身体によい影響を与える生きた微生物です。ヨーグルトなどビフィズス菌や乳酸菌が含まれるものを食べて、腸内環境を変えようということです。
実際、潰瘍性大腸炎では、乳酸菌やビフィズス菌を摂ると一定の効果があるようです。
オリゴ糖に代表されるプレバイオティクスは、唯一ビフィズス菌を元気にして増やす働きがあるものです。善玉菌であるビフィズス菌にエサを与えたりして、育ちやすい環境を整えるということです。例えば、人間の消化酵素では分解されにくいもののビフィズス菌が栄養源にする食物繊維などが利用されます。これはある程度の効果があるようで、イヌリンやフラクトオリゴ糖のようなビフィズス菌を増やす働きがあるものを摂ると、炎症性腸疾患の炎症が抑制されます。(辨野義己 『腸を整えれば病気にならない』 p68~69)
辨野義己氏がこのように述べているとおり、炎症性腸疾患のうちの潰瘍性大腸炎を予防したり、炎症を抑えて症状を緩和するには、乳酸菌や食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌生産物質など、「プロバイオティクス」や「プレバイオティクス」による腸内フローラ改善が効果的です。
また、ある種の乳酸菌は腸管のバリア機能を高める作用をもつといわれており、腸内細菌のうちの善玉菌が増えると、腸管のバリア機能も回復していくとされています。
そのため、腸内フローラを改善して腸内細菌のバランスを整えたり、腸内細菌を増やしたりしていくことは、潰瘍性大腸炎の予防や症状緩和のために大切です。
ちなみに、腸内フローラの改善による潰瘍性大腸の症状緩和に関しては、イタリアのギオンチェティという学者が、患者さんに対して、1日に2兆個もの乳酸菌が含まれているサプリメントを摂取させたところ、症状が改善したという報告があります。
17種類1.7兆個の乳酸菌だから私も実感できました。『女神フローラ』
さらに、主に水溶性食物繊維を摂ることで、バクテロイデス菌やビフィズス菌が作り出す「短鎖脂肪酸」にも炎症を抑制する効果があると言われています。
そのため、普段から食物繊維をたくさん摂るようにすることも、潰瘍性大腸炎の予防と緩和に効果的だと考えられます。
参考文献
辨野義己 『腸を整えれば病気にならない 腸内フローラで健康寿命が延びる』 廣済堂出版
西本真司 『潰瘍性大腸炎が治る本』 マキノ出版
内藤裕二 『消化管は泣いています 腸内フローラが体を変える、脳を活かす』 ダイヤモンド社
松生恒夫 『腸に悪い14の習慣 「これ」をやめれば腸が若返る』 PHP研究所
福田真嗣 『おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法』 KKベストセラーズ