ここでは消化酵素の腸内環境改善効果について述べています。
腸内フローラを改善するには、日頃の食事に気をつけることが大切ですが、食物繊維やオリゴ糖のほかにも重要な役割を果たすものとして、生の野菜や果物、発酵食などに多く含まれている「酵素(enzyme)」の存在があります。
酵素は体内において化学反応を起こさせる触媒(仲立ち)として働いており、車でいえば「バッテリー」のような存在です。そのため、新陳代謝や免疫機能の維持などをはじめとして、生命活動の維持に必要不可欠です。
さらに酵素は体内において、栄養素を分解してエネルギーを取り出し、組織や器官を作り出す「代謝」と、食べ物を分解して吸収しやすくする「消化」という、 二つの重要な役割を果たしています。
しかし、現代の食生活においては、体内の酵素が不足しがちになっていることが問題であるとされています。その理由は、酵素は熱に弱い性質があり、50℃を超えてくると失活(効果が失われる)てしまうため、加熱食品や加工食品がありふれるようになった生活環境の変化によって、体外からの補充が難しくなってきたからです。
体内で作られる酵素の総量は人それぞれ決まっていると言われています。そのため、体外から補充することで体内の酵素の減少を抑えることが出来ますが、食物から摂れるのは消化の役割を果たす消化酵素のみだとされています。
また、現代は飽食の傾向にあるため、酵素のちからによって分解しきれなかった食物がきちんと栄養素として吸収されないまま、大腸に残留してしまう「消化不良」の問題も頻繁に起こるようになってきています。
消化不良が起きてしまうと、腸内において「腐敗」「異常発酵」「酸敗」といった現象が起こり、悪玉菌(有害菌)を増殖させる原因になると言われています。
さらに現在、その消化不良によって「アレルギー」の症状が引き起こされることが、多くの専門家から指摘されています。
したがって、新鮮な野菜や果物、酵母のちからによって生み出された発酵食などを積極的に食生活に取り入れることは、消化不良を防ぎ、腸内環境の悪化を予防することに役立ちます。
例えばパイナップルやマンゴー、パパイヤといった果物はシステインプロテアーゼなどのたんぱく質分解酵素が含まれていることがよく知られていますし、日本の伝統食である納豆にもナットウキナーゼという血栓の予防にも効果があるたんぱく質分解酵素が含まれています。
また近年は新谷酵素など、体内の消化酵素の補充をサポートしてくれる良質な酵素サプリメントや、加熱処理を抑えて活きた酵素が含まれている酵素ドリンクなども販売されるようになってきています。
また、酵素が実は腸内細菌と大きな関わりを持っていることが分かってきています。酵素研究の第一人者である鶴見隆史氏は腸内細菌に関して、以下のように述べています。
私たちは、彼らの宿主であり、そして私たちが摂取した栄養分の一部を腸内細菌はおもな栄養源として、分解・合成などの発酵活動をして増殖し、同時にさまざ まな代謝物を産出しているのです。その代謝物を、今度は私たち宿主がエネルギー源や体の構成要素として利用しているわけです。
この分解・発酵には、牛のルーメン菌と同じように善玉菌の酵素が活躍しています。今まで、人間には消化できないとされていたセルロースも、ある程度、分解・発酵できることが現在、わかっていますが、それは、この善玉菌の酵素によるものだったのです。
(鶴見隆史『酵素の謎―なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』より)
つまり、腸内細菌の善玉菌は増殖すると同時に、酵素を分泌して、消化や吸収、代謝を助けてくれているのです。また、胃腸内視鏡外科医として長年にわたって多くの人の腸の内部を観察し続けてきた新谷弘実氏は、腸内細菌の働きについて以下を挙げています。
腸内細菌の働き
① 約三〇〇〇種類の体内酵素を作り出す。
② 体内に侵入してきた細菌や毒素を腸内で排除する。
③ 化学物質や発ガン物質を分解する。
④ 免疫系統を活発化し、自然治癒力や抵抗力を向上させる。
⑤ ビタミンやホルモンを作り出す。
⑥ 消化・吸収や代謝の働きに関わる。
⑦ 抗生物質の副作用を防ぐ。
(新谷弘実『健康の結論』より)
このように、腸内フローラのバランスが改善され、腸内細菌がうまく働くようになると、きちんと腸内細菌によって多くの酵素が分泌されるようになり、それによって消化・吸収・代謝の能力が高まり、免疫力も向上していくと考えられます。
参考文献
新谷弘実 『健康の結論―「胃腸は語る」ゴールド篇』 弘文堂
新谷弘実 『酵素力革命 若返り酵素「ニューザイム」を活性化させる生き方』 講談社
鶴見隆史 『「酵素」の謎 なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』 祥伝社
鶴見隆史 『「酵素」が免疫力を上げる!』 永岡書店