腸内細菌の集まりである腸内フローラは「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」のバランスを保つことが理想的ですが、それ以外にも、「多様性」を意識することが大切になってきます。
より詳しく述べますと、善玉菌や悪玉菌、日和見菌は、それぞれがそれぞれの役割を腸内で担っているため、単純に善玉菌のみがカラダにとって良い働きをするわけではないということです。
つまり、悪玉菌と呼ばれる腸内細菌も実は腸やからだの健康を維持するために、様々な役割を担っているということです。
実際、最近の研究では、これまでのような「善玉菌/悪玉菌/日和見菌」の分類は、通用しなくなってきているとされています。
この腸内フローラのバランスや多様性に関して、若き腸内フローラ研究者の福田真嗣氏が『おなかの調子がよくなる本』のなかで以下のように述べています。
これまでの科学では、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の理想的なバランスは、2:1:7くらいであり、善玉菌が常に悪玉菌より多く、悪玉菌を抑えているのが健康的な腸内細菌と考えられてきました。
しかし、腸内細菌については、科学の進歩でさらに詳しいことがわかってきました。これまで善玉菌とされていた中にも働きのいい菌とそうでもない菌がいたり、悪玉菌や日和見菌だと思われていた中にもいい働きをする菌がいたりするのです。
より詳しくいうと、善玉菌に分類されているビフィズス菌には、食中毒を起こす病原性大腸菌の感染を予防できる種もいれば、予防できない種もいることがわかりました。
また、ずっと悪玉菌に分類されていたクロストリジウム属の細菌には毒を作る、まさしく〝悪玉〟種もいれば、大腸炎を抑制する免疫細胞の分化を促す酪酸を産生する種もいることがわかりました。
つまり乳酸菌だから善玉、クロストリジウムだから悪玉と、一概には分けられなくなってきたのです。これからはもっと研究が進み、腸内細菌が機能別に細分化されていくと思います。
(福田真嗣『おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法』p42~44)
また、善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスが大切でありますが、研究が進むことによって腸内フローラの多様性が重要であるという考え方も広がってきています。病気の人は腸内フローラの多様性が低下してしまっていることがわかってきたからです。
腸の中に特定の微生物ばかりが多いのではなく、たくさんの種類の微生物がいて、あらゆる食べ物の分解に対応できる、つまり何が腸にやってきても対応できることこそが健康につながるのです。
この「多様性」というのは重要なキーワードの一つです。これは、余談になりますが、腸内フローラだけではなくて、人間社会とも共通することです。
(福田真嗣『おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法』p44~45)
このように、福田真嗣氏は人間社会にも共通する腸内フローラの多様性の大切さについて述べています。
したがって、腸内フローラの改善で重要になってくるのは、腸内細菌のバランスと多様性を意識しながら、腸内環境を整えていくことなのだと考えられるのです。