ここでは腸内フローラや腸内環境を改善するのに効果的なプロバイオティクスとプレバイオティクスのうち、プロバイオティクスとは何かということについて述べています。
「プロバイオティクス」とは生きたまま腸にたどりつき、そこで産生する乳酸などの代謝産物が、ヒトのカラダに有益な健康効果をもたらしてくれる微生物のことです。
ヒトにとっての有用な菌として代表的なのは乳酸菌やビフィズス菌ですが、「乳酸菌」とは、腸内で善玉菌として働く乳酸桿菌などの総称のことで、乳酸を生み出して腸を酸性に保つ働きがあります。
一方、ビフィズス菌が生み出すのは乳酸と酢酸です。
もし、腸が酸性に保たれなければ、病気をもたらす細菌やウイルスが死滅せず、体内に侵入しやすくなったり、悪玉菌が増殖しやすくなったりすると言われているため、ヒトの腸内の環境は常にビフィズス菌や乳酸菌の働きによって正常な酸性に保たれなければならないのです。
ところで、外から摂取したビフィズス菌や乳酸菌はやがて体外に排出されますが、生きたまま腸に届くと、3~7日は乳酸や酢酸をせっせと生み出してくれるとされています。
また乳酸菌は、腸管の免疫システムに存在する樹状細胞のTLRと呼ばれるセンサーを働かせることで、免疫活性を促すため、免疫力を高めるのにも役立つとされています。
このTLRと呼ばれるセンサーはアレルギーの発症原因にも関わってくるため、乳酸菌の摂取は花粉症やアトピー性皮膚炎など、アレルギー症状の改善にも効果的なのです。
そのほか、ヒトにとっての有用菌を腸内に送り込むプロバイオティクスの効果は、抗生物質を使用することによって腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが乱れた際、病後の回復を早めたり、下痢や感染症を予防したりすることが期待されています。
プロバイオティクスはその核心において、免疫系の働きを健全なほうに向かわせる何らかの効果を有しているに違いない。二十一世紀の根底に横たわるものを思い出してほしい。私たちの体を苦しめているのは炎症だ。プロバイオティクスに真の価値があるとすれば、それは炎症を鎮めることだろう。
(アランナ・コリン『あなたの体は9割が細菌』 矢野真千子 訳 p270)
この「プロバイオティクス」を利用することによる腸内フローラの改善は、乳酸菌が含まれたヨーグルトやチーズ、納豆や漬け物といった日本伝統の発酵食品などを日頃から食生活に採り入れることで実践することが可能です。
その際、植物性の乳酸菌などが生きたまま腸に届いて働くことが望ましいですが、胃酸によって死菌となった乳酸菌も腸内の善玉菌のエサになるため、菌が生きているか死んでいるかに強くこだわる必要はないともいわれています。
むしろ、ひとつの乳酸菌にこだわらず、様々な種類の乳酸菌を試してみることのほうが大切です。なぜなら腸内細菌の構成は成人になるとほとんど決まってしまっており、新しい菌が定着するのはなかなか難しいため、どの菌が自分の腸内に生息しているか、また、どの菌が新たに定着するかは分からないからです。
それに加え、乳酸菌は「数」に気をつけて、出来るだけ多く摂った方が良いと言われています。
近年、ヨーグルトや乳酸菌飲料だけではなく、1億個以上の乳酸菌が含まれたサプリメントや乳酸菌生成エキスが多く販売されるようになってきていますので、プロバイオティクスに関しては、そのようなサプリメントを利用してみるのも一つの手段だと考えられます。